「夏の夕立は、馬の背をわける」ということわざがある。
局地的に振ることがおおい夏の夕立は、馬の片側に降っても、反対側は雨粒一つ降らない、ということを表すそうだ。
先週の金曜日、娘の学校に迎えにゆく半時間ぐらい前から、急に空が暗くなり、いきなり
雷が鳴り始めた。これは、大雨にでもなったら大変と、ちょっと早かったのだが、そのまま、車で学校に向かった。
学校までは10分、さて、そろそろ学校に続く一本道へと差し掛かったあたり。車の前方の窓ガラスに
カツーンッとあたったものがあった。もちろん、目では確認しなかったが、確かに、何か堅いものが、ガラスに当たったような音が聞こえた。
はて、砂利でもあたったのかしらと、前方のガラスに目をやりながら、車の列の最後尾に並んだ。その時、事件は起こった。
パラッ、パラッ、パラッ、パラッ、マシンガンのような音。
一瞬、びっくりして、何が起こったのか分からなかったが、よく見ると、1センチほどの氷の塊。
雹だ。車のボンネットの上で30センチくらい振ねあがっては、お菓子のアラレを散らかしたように、車の脇にさらさらとすべり落ちていく。
とにかく音がすごい。あまりにびっくりして、実は、仕事前でまだ家にいたダンナにケータイで電話したのだが、相手の声が聞こえない。おまけに、電波が弱いのか、電話は勝手に切れてしまった。
しばらく、車の中で、じっとしながら、頭の隅で、この雹のせいで、まだローンの支払いも終わっていない我車が
ボコボコにならないことを祈る。
そういえば、前夫の父親の車は、オーランドのピザハットの駐車場で、グレープフルーツ大の雹にやられてしまった。
アメリカでは、平気でグレープフルーツやゴルフボールのサイズなんていう、大きな雹までふる。
しばらくたって、雹は収まったが、今度は、風が強くなってきた。木から飛ばされた葉っぱが真横に
ビューンと飛ばされて行くのが見える。近くの木の幹が折れて
バサッと落ちた。道の脇に生えている松が、
ブイーン、ブイーンと、しなっている。稲妻が、
ビカビカと数秒おきに下る。車の横腹のほうから、風が吹いているのか、車が
ガンガンと揺れる。
はっきり言って、怖い。実は、心臓が
ドキドキ。
その頃、ダンナが電話をかけなおしてきた。聞くところによると、車で10分離れたところにある我が家のあたりは、小雨が降っただけ。おまけにダンナは、違う道を通ってすでに、仕事に行っており、これまた、そんな
過激な天候のところはなかったとのこと。
しばらくたって、まだ少し暗い空に切れ目ができて、もう、お日様がのぞきだした。車の列も動きだして、やっと、娘の順番になった。
娘は、開口、一番、「今ねー、すごかったんだよ、クラスから出られなかったの。廊下にでるドアを開けたら、氷の塊がドーッとクラスに入って来たんだよー。
ソーダマシーンから出てくるぐらいのサイズの氷だったんだ」。
我が家について、早速、車を点検してみると、幸いにも、へこんだところはないようだ。ただ、10分のドライブにもかかわらず、
車の片側だけに松葉がいっぱいへばりついていて、それが、車の新しいデザインのようで、面白い。
片側だけとは、「夏の夕立は馬の背を分ける」ならぬ、現代の馬である「車の背を分ける」を目にしたようだった。